ピアノ協奏曲第9番 (モーツァルト)
ピアノ協奏曲第9番 変ホ長調 K. 271 は、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが1777年に作曲したピアノ協奏曲。『ジュノム[2]』(Jeunehomme)の愛称で親しまれている(→「曲の成立に関する研究」)。
概要
[編集]第6番、第7番『ロドロン』、第8番『リュッツォウ』、そして本作の4曲はそれぞれ作曲年代が近いが、4曲の中で最後にある本作は内容、形式ともに特に優れた曲として高く評価されている。本作は1777年1月にザルツブルクで作曲され、フランスの女流ピアニストである「ジュノーム嬢」("mademoiselle Jeunehomme")がザルツブルクを訪れた際に、彼女に献呈されたといわれてきたため、従来は『ジュノム』(Jeunehomme)という愛称で呼ばれていた。この曲の新鮮さ、大胆さとこれまでにない規模の大きさは、彼女の影響によるものとされている。
カデンツァは第1楽章、第2楽章用にそれぞれ2種類書かれている。第3楽章用のカデンツァ(アインガング)は2箇所あり、それぞれ3種類書かれている。この曲のカデンツァが数多く残されている理由は、モーツァルト自身がこの曲をよく演奏していたためであるとされ、少なくとも1777年10月4日にミュンヘンで、1781年4月3日と1783年の春にウィーンで演奏されたことが知られている。
曲の成立に関する研究
[編集]「ジュノーム嬢」が一体誰であるのかは長年の謎であり、モーツァルトの研究者の課題となってきたが、2004年3月15日に音楽学者のミヒャエル・ローレンツが、モーツァルトの友人で著名なフランス人舞踏家ジャン=ジョルジュ・ノヴェールの娘でピアニストのヴィクトワール・ジュナミ(Victoire Jenamy)であることを発見した。ローレンツによれば、「ジュノーム」なる名前は1912年に2人の著者(Téodor de Wyzewa, Georges de Saint-Foix)によって書かれたフランス語の伝記の中で初めて現れるが、単にこの人物の名前がわからなかったので、フランス語で「若者」を意味する "jeune homme" と呼んだものに過ぎず、結局のところ人の名前ではなかった[3]。
そのため、近年では日本でもCDや出版物によっては『ジュノーム』ではなく『ジュナミ』と表記されることが増えてきている。
楽器編成
[編集]曲の構成
[編集]全3楽章、演奏時間は約32分。
脚注
[編集]- ^ "Award of the Papal Equestrian Order of the Golden Spur to Wolfgang Amadeus Mozart" Archived 2010年9月18日, at the Wayback Machine., Vatican Archives
- ^ 髙木竜馬 [@RyomaTakagi] (2024年8月25日). "ツイート". X(旧Twitter)より2024年9月28日閲覧。
- ^ Lawrence van Gelder (2004-03-15), Arts Briefing: Highlights; Mozart by its Rightful Name, The New York Times
外部リンク
[編集]- ピアノ協奏曲第9番 変ホ長調 K. 271『ジュナミ(ジュノーム)』の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト
- ピアノ協奏曲 第9番 変ホ長調 「ジュナミ」 K.271 - Mozart con grazia
- 吉成順「「ジュノム嬢」の伝説」『ユリイカ臨時増刊「モーツァルト」』1991年。オリジナルの2016年11月2日時点におけるアーカイブ 。
- 『《ジュノーム協奏曲》に関するNYT記事(2004.3.24)の試訳』 。